中国茶の話

   

中国茶10年ほど前のある日、私は親しい友人に「中国茶をご馳走するから家に来てほしい」と、招きをうけました。
彼が自分の家に招いてくれたことなど記憶にない私は、めずらしいこともあるものだと、何も思わず彼の家を訪問しました。

玄関に出迎えてくれた友人は、いつもは見せたことがない、こぼれるような笑顔で、そそくさと私を応接間に招じました。
そこには、タタミ1枚分くらいのテーブルに中国茶の道具が並べられており、まんなかの四角い大きなお皿に、お菓子がきれいに盛られていました。
私の驚き顔を楽しむように友人が言いました。「先日めずらしいお茶が手に入ったので、ぜひ君に飲んでもらおうと思って・・・」



彼が中国茶が好きだとは知っていましたが、こんなに凝っているとは知らなかった私は、只々驚いて、彼のお茶を入れる手つきを見ていました。
日本の茶道なら、私も高校時代からのキャリアで話ができますが、当時の私は、中国茶を愉しむ手順など知らないものですから、彼のしぐさを、まねするだけです。


器を鼻に近づけて香りを愉しむ。
おやこの香りはなんだったかなあと思いながら一口すすると、あっこれは金木犀だ! と思わず声に出す。
友人はニコニコしています。
テーブルのナッツをつまんで二煎めを口にする。
しばらくして、このお茶の名前と産地や中国茶の楽しみを語り始めます。
私の抹茶好きに刺激を受けて、以前から好きだった中国茶を、深く追求してみる気になったのだそうです。


そして道具を揃えたり、お茶を飲み比べたりしているうちに、いつの間にかドップリと浸かっていたそうです。
また中国茶を通して、同好の仲間が増えてきたと嬉しそうに話してくれました。
そんな話を聞いているところへ、婦人が点心を持ってこられました。
蒸しあがったばかりのえび餃子とシュウマイ。
ここからは婦人も交えての楽しい会話になります。


それから、二番目のお茶は花茶を入れてくれました。
そしてまた花茶の産地や特徴などなど、話にも花が咲きます。中国茶ってこんな楽しみがあったのだと、友人から教わりました。
以来、私も中国茶に興味をそそられ愉しむようになりました。娘の嫁ぎ先が中国に工場を持っている関係で、年に4~5回夫婦で上海、北京に行っています。
そのつどめずらしいお茶を買ってきてくれます。
というより、娘のほうが中国茶のファンで、私より道具の数は多く集めております。


娘から「お茶を飲みにいらっしゃい」と連絡が入ると、「おっ、また珍しいお茶が手に入ったな」とワクワクしながら、30km先まで車を走らせます。



◇ お茶の種類図




中国茶の種類


中国で最も多く飲まれているお茶です。生産量も全体の70パーセント以上を占めています。
日本茶と同じ不醗酵茶ですが、茶葉を蒸して醗酵を止める日本式に対して、釜で炒る(いる)方法です。
同じ緑茶でも「炒る」と「蒸す(むす)」で味も、香りも微妙に違ってきます。
日本のお茶は「味」を優先します。
これに対して中国は「香り」を優先するようです。
中国緑茶は、より高温でいれるため香りが強くでます。



     ①
 殺青(さっせい)

  高温で釜炒りをして、
  葉の醗酵を
  とめる。
     ② 
揉捻(じゅうねん)

  機械や、手で揉んで形を
  整える。
  香りが増す。
     ③
乾燥

  茶葉を乾燥する。



龍 井 茶
(ロンジンチャ)

浙江省杭州西湖周辺山地

中国緑茶の代表的銘柄。
一煎目で色を、二、三煎目を飲み、四煎目で湯の中の茶葉を鑑賞するのが作法とされる。

径 山 茶
(けいざんちゃ)

浙江省杭州

浙江省の伝統的銘茶の一つ。

碧 螺 春
(へきらしゅん)

江蘇省洞庭湖山東山

中国を代表する銘茶の一つ。
最高級茶は一芯一葉で摘み、この葉を雀舌と言います。
飲むときに茶の葉を落として葉も鑑賞する。

黄 山 毛 峰
(こうざんもうほう)

安徽省黄山

明代から有名。
一芯一葉で作る最高級茶は、栗の味を連想させる。





白いうぶ毛のある新芽やよい若葉だけを使う。 短時間日光に当てて醗酵させる微醗酵茶です。
宋(北宋)の八代皇帝徽宗は教養の高い文人、文化人で、この皇帝がもっとも好んだのが 白茶でした。

    ①
 萎凋(いちょう)

茶葉に温度を加えて
しおらせる。
   ②
    乾燥

         

銀 針 白 毫
(ぎんしんびゃくごう)

福建省北部

春に白い芽が出たとき芽だけを摘んで作る。
飲み方は緑茶と同じ。
100度のお湯をさして5~6分静かに待つと、3枚の新芽が開いてくる。

白 牡 丹
(はくぼたん)
福建省

白いうぶ毛に覆われた新芽を花に似せて作る。
銀針白毫よりやわらかく淡い味。

寿 眉 牡 丹
(じゅびぼたん)
福建省

銀針白毫の摘み取ったあとの芽
か、一枚の葉でつくる。







青茶とはウーロン茶のことです。
半醗酵茶に分類されますが、50パーセントの醗酵ということではなく、限りなく緑茶に近い低醗酵茶から、あと少しで紅茶になるような高醗酵茶まであります。
醗酵度合いによって、さまざまな味と香りが愉しめます。
中国茶の中でもとくに青茶は香りを愉しむといわれ、そのために考えられた茶道具や、茶器が工夫されました。
福建省の武夷山はウーロン茶の故郷ともいわれ、武夷山の岩肌から採る武夷岩茶は有名です。

    ①
 萎 凋
  (いちょう)

 茶葉に温度を加えて
 しおらせる
      ②
 揺 青
  (ようせい)

茶葉を揺らして混ぜること。
このとき茶葉に含まれる
多くの成分が変化をして、
人体に有効に働くようになる。
     ③
 殺 青
 (さっせい)

 ウーロン茶の水色、味と香りを
決定する大事な作業。
つまり、どのくらいの状態で
茶葉の醗酵を止めるかが
勝負どころ。
    ④
 揉 捻
 (じゅうねん)

機械や手で揉んで形を整える。
味と香りが増す。
      ⑤
 コウ 焙
  (こうばい)


火をいれて炒るようにしてゆっくり
乾燥させます。
大 紅 袍
(だいこうほう)
福建省武夷山
(ぶいさん)

武夷四大銘茶の筆頭。武夷山の一角にある岸壁に、樹齢400年を越す古木3本から、春一度だけ摘み取る、超貴重なお茶。 現在は、本家の大紅袍に味、香りが最も近いとされる茶樹から作られる。

鉄 羅 漢
(てつらかん)

福建省武夷山

武夷四大銘茶の一つ。
熱病の漢方薬として珍重されたという。
花の香りが高く、「工夫茶(コンフーチャ)として飲むとたのしい。

水 金 亀
(すいきんき)

福建省武夷山

武夷四大銘茶の一つ。 穏やかな柑橘系の香り。

安 渓 鉄 観 音
(あんけいてっかんのん)
福建省安渓

安渓で作られる鉄観音茶。オレンジ色の水色。 甘いランの香りがする。 7煎いれても香りがのこる。

高山茶
(こうざんちゃ)
台湾、阿里山 ほか

台湾には高い山が多い。阿里山も標高2000メートル級の山が連なっている。
ここで産したウーロン茶のことをいう。
甘くやさしい味がする。

文山包種茶
(ぶんざんほうしゅちゃ)
台湾、台北市郊外文山地区

醗酵度が低く、緑茶に近い。
そのため青茶(チンチャ)とも呼ばれ、淡い黄色の水色で、かすかにランの香りがする。




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完全発酵することで、茶葉の色も、水色も赤みをおびます。
世界各地で生産される紅茶も原産地は中国とされています。
中国紅茶は小葉種が多く、インドやスリランカ産に比べてタンニンが少なく、渋みは少ない。







黄茶は仕上げの直前工程で悶黄(もんこう)といわれる独特の製造工程があります。
悶黄とは、乾燥させた茶葉を高温多湿の空間に放置することで、この間に茶葉は菌の働きで、軽い後醗酵を起こし、黄色に変化します。
渋みのない緑茶に似ています。
芽だけで作る、黄芽茶(ホワンヤーチャ)。若葉を使う、黄小茶(ホワンシャオチャ)。
少し大きく成長した葉で作る、黄大茶(ホワンダーチャ)の三種類があります。




    ①
  殺 青
 (さっせい)

ウーロン茶の水色、味と香りを決定する大事な作業。
つまり、どのくらいの状態で茶葉の
醗酵を止めるかが勝負どころ。
    ②
  揉 捻
 (じゅうねん)

機械や手で揉んで形を整える。
味と香りが増す
    ③
  初 コウ

2回コウ焙するときの1回目。 
主に水分を蒸発させる。
    ④
   悶 黄
   (もんおう)

まだ水分を多く含んだ茶葉を
高温多湿な場所に放置し、
菌の働きで軽く後発酵させる。
    ⑤
  復 揉
   (ふくじゅう)

適度に醗酵させた葉を再度
揉むこと。
    ⑥
  復コウ
   (ふっこう)


再びコウ焙すること。
香りと味を整える。

君 山 銀 針
(くんざんぎんしん)
湖南省洞庭湖君山

およそ千年の歴史を持つ。
清朝の乾隆帝はこのお茶をが大好物だったという。
2センチほどの白毫で覆われた芽を摘み、摂氏500度の熱であぶり、牛皮紙に包んで悶黄をする。 
この作業を3度繰り返しその間にわずかずつ後醗酵が起きる。
100度のお湯をそそぐと葉は全部上に集まる。
5~6分待って沈む様子を愉しみながら飲む。

蒙 頂 黄 芽
(もうちょうこうが)
四川省蒙山

成都の西と雅安にまたがる山を蒙山といいます。
この山頂を蒙頂という。
この蒙頂で作られるお茶の総称が蒙頂茶で、蒙頂黄芽は一級品で、珍重される名品。

霍山黄芽
(かくざんこうが)
安徽省大別山

名前は古く唐代から伝えられていた。
現在は71年に製造再会したもの。
一芯一葉で摘み、いくらか扁平に仕上げる。
黄茶独特の燻製は少ない。






黒茶はすべて後醗酵茶です。摘んだ茶葉をすぐ加熱して緑茶を作り、 それを1mほど堆積し(これを 渥堆=あくたい、という)麹菌の繁殖を促進さす。
2年3年と放置し熟成さす。
プーアル茶が有名。
醗酵前に型にはめて固めると緊圧茶になります。
黒茶を飲むときは洗茶をしたほうがよい。
年月の経った良質の黒茶ほど、ゴミやほこりが付着しているから、最初のお湯でそれらを洗いながすひと手間が必要です。



       ①
   殺 青
   (さっせい)

ウーロン茶の水色、味と香りを
決定する大事な作業。
つまり、どのくらいの状態で茶葉の
醗酵を止めるかが勝負どころ。
    ②
   揉 捻
   (じゅうねん)


機械や手で揉んで
形を整える。
味と香りが増す
      ③
   渥 堆
   (あくたい)

高温多湿で水分を含んだ茶葉を
積み重ねて菌をつけて醗酵さす。
      ④
   渥 堆
  (あくたい)

高温多湿で水分を含んだ茶葉を積み
重ねて菌をつけて醗酵さす。
   ⑤
  乾 燥  

プーアル茶 雲南省西双版納
 (シーサンバンナ、タイ族
 自治州)

双版納(シサンバンナ)はメコン川上流に位
置し、海抜千数百メートルの山々で作られる。
お茶の樹はすべて喬木で葉が大きい。

餅 茶
(へいちゃ)
雲南省双版納

9月から冬の初めまでに摘んだ茶葉を
プーアル茶に作り、その葉を円盤状に緊圧、成型したところからこの名前がついた。
40年もの50年ものもあるといいます。







花茶(ファチャ)は茶葉に花の香りをつけたお茶の総称。
  緑茶をベースにしたもの。青茶、黒茶、紅茶など色々な茶葉をベースにして作られます。

茉 莉 花 茶
(まつりかちゃ)


英名=ジャスミンティー

緑茶に茉莉花の香りをつけたもの。
中国では緑茶の70パーセントを茉莉花茶にすると
いわれるぐらい。
主に華北の人が日常茶にしています。
ジャスミンの花のツボミを摘んで下に敷いて、その上に茶葉を広げておくと、ジャスミンの香りが上の茶葉に移る。

菊 花 茶
(きくかちゃ)

白菊を乾燥させたもの。
生薬としても使われ、解熱、解毒、目の疲れに効果があるとされる。

   
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