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<31> 野外の茶の湯の心得。


    野ガケ・狩場ナドニテ茶会ヲ催スコトアリ、宗易、大善寺山ニテ御茶上(たてまつ)ラレシニハ、
    愚僧モ供シテ勝手ヲ仕(つかまつり)シユヘ。ヨクヨク所作ヲ見申候也、宗易ノ玉フハ、野ガケ
    ナドハ定リタル法ナケレトモ、根元ノ格ハ、一ゝゝソナハラズシテナリガタシ、第一景気ニウバ
    ゝレテ茶会シマヌモニ也、別而(べっして)客ノ心モトマルヤウニスル本意也、夫故(それゆえ)、
    道具モ別而秘蔵ノ茶入ナドヨシ、大善寺山ニテハ、尻フクラ茶箱ニ仕込レシ也、能ゝゝ勘弁ス
    ベシ、器物ナトハ水スゝギテサハヤカニスルヲ第一トス、興ヲ催シ過候ヘバ、雑席ノヤウニナリ、
    ウトゝゝシナケレバ景気ニウバハルゝ也、ヨクゝゝ巧者ノ所作ナラデハ成(なり)ガタシ、
    


    【熊倉博士の語訳】


    野遊びや狩場などの折に茶会をすることがある。宗易が大善寺山でお茶を豊臣秀吉にさし
    あげたときは、自分もお供して茶会の勝手を手伝ったので、よくよく宗易の茶の所作をみる
    ことができた。
    宗易がいわれるには野遊びなどでは決まった法はないけれども、根本の骨組は一つ一つ
    そなわっていなければできないものである。第一、周囲の景色に興味を奪われて茶会が
    しみじみとしたものにならない。とくに客の心も茶に集中するようにするのが本当である。
    それだから道具も特別秘蔵の茶入など出すのがよい。大善寺山では尻ふくらを茶箱に組込
    んで使われた。よく考えてわきまえなさい。器物などは水ですすいでさわやかに扱うのを第一
    にする。ただ興がのりすぎると雑談の席のようになってしまうし、よそよそしなければ景色に
    興味をとられることになる。よほどの功者の所作でないとできないことだ。


    【語釈】
    
   
    尻フクラ : 尻膨茶入。茄子茶入によく似て尻が張っているのでこの名がある。この利休所持の
    尻膨は現在細川家伝来の「利休尻膨」といわれ、細川三斎が関が原の役の恩賞として家康から
    拝領した唐物茶入である。



    


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