お茶が入りましたよ:トップ>茶道を愉しむ>『南方録』を読む>10 夏は涼しく、冬はあたたかく

<10> 夏は涼しく、冬はあたたかく。


    或人、炉ト風炉、夏、冬茶の湯ノ心得、極意ヲ承(うけたまわり)タキト宗易ニ問レシニ、
    易コタヘニ、夏ハイカニモ涼シキヤウニ、冬ハイカニモアタゝカナルヤウニ、炭ハ湯ノワク
    ヤウニ、茶ハ服ノヨキヤウニ、コレニテ秘事ハスミ候由申サレシニ、問人不興シテ、
    ソレハ誰モ合点ノ前ニテ候トイハレケレバ、又易ノ云、サアラハ、右ノ心ニカナフヤウニ
    シテ御覧セヨ、宗易客ニマイリ御弟子ニナルベシト被申(もうされ)ケル、同座ニ笑嶺(しょう
     れい)
和尚御座アリシガ、宗易ノ被申ヤウ至極セリ、カノ諸悪莫作(しょあくまくさ)・諸善
    奉行(しょぜんぶぎょう)ト鳥カ(ちょうか)ノコタヘラレタル同然ゾトノ玉ヒシ也、
    

    【熊倉博士の語訳】


    ある人が「炉と風炉のとき、すなわち夏と冬の茶の湯の心得、秘訣を教えていただきたい」と
    宗易(利休)にたずねたのに、宗易が答えたのは「夏はいかにも涼しいように、冬はいかにも
    あたたかなように、炭は湯のわくように、茶は飲み加減のよいように。これが秘事のすべてだ」
    ということだったので、だずねた人は興ざめして「それは誰でも承知していることです」というと、
    また宗易は「それならこういう心にかなうような茶をしてみせてほしい。私は客に行ってあなた
    の弟子になろう」といわれた。その座に笑嶺和尚も同席していて、「宗易がいわれたことは至極
    もっともだ。それ諸悪莫作諸善奉行と道林禅師が答えられた心も宗易が今いったことと同じ
    だった」とおっしゃった。


    【熊倉博士の解説概略】


    茶の湯が次第に様式を整えてくると、点前も複雑となり道具配置も微妙になってくる。
    秘事といえば、こうした微妙なむずかしいことだと思いこんで、枝葉末節にとらわれる
    茶人を利休が一喝した逸話である。
    利休はときどき原点に帰れ、とばかりこうした言葉をはく。


    
      《茶の湯の原点とは、利休の言ったことに帰れということ。この「南方録」を何度も読むことです》



    


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